今回はイケてる会社のつくり方シリーズ第3弾として、
資本金の設定について、書かせて頂きます。
会社設立時の資本金額は、設定を一歩間違えると、
会社に大損害を与える可能性を持つ重要な項目になってます。
設定のポイントを次の5つに分けて説明したいと思います。
①理想的な資本金の額はいくら?
②設立時の資本金の設定による節税のラインは1,000万円!
③特定の事業では、一定の資本金額が必要!
④銀行口座をより開設しやすくする!
⑤的確な資本金の設定と事業計画で融資を受ける!
なお、過去のブログはこちらになります。
<イケてる会社のつくり方シリーズ>
第1弾「社名編」:ソニーの社名の由来って?隣の素敵な会社より10倍イケてる会社の創り方
1 イケてる会社は名前がカッコいい!
第2弾「決算月と設立日編」:ユニクロはなぜ8月決算?隣の素敵な会社より10倍イケてる会社の創り方
2 イケてる会社は決算月をスマートに決める!
3 イケてる会社は設立日もしっかり考える!
4 イケてる会社の資本金は100万円以上!
少し古い話になりますが、平成18年の会社法改正以降、
設立時の資本金の額が1円以上であれば株式会社を作ることができるというお話を耳にされたかたもいらっしゃるかと思います。
実際には資本金が1円であったとしても、
株式会社の設立そのものには別途登録免許税や定款認証費用がかかるため、最低でも20万円以上が必要になります。
とはいえ、かつて1,000万円以上の資本金が必要であったことを考えると、
株式会社の設立はとても身近なものになったのではないでしょうか。
さて、この資本金の額は、一般的に会社の取引規模や財政的な体力、
はたまた創業者が会社にかける意気込みを表しているという見方をされることが多いです。
株式会社は、個人で事業を行っている場合よりも、
取引先や金融機関からの信用が当然に高くなりますが、、
資本金の額が少ないと、取引を断られたり、融資を受けられなくなることがあります。
理想的な資本金の額はいくら?
会社の設立時の資本金は、いわゆる「元手」です。
会社の売上が入金されるまでは、この資本金を利用していく形となります。
商品の仕入れだけでなく、テナントの敷金や人件費、パソコンなどの備品の購入、
ホームページや名刺・ロゴの作成、広告宣伝などさまざまな支出が考えられますので、
計画に沿って設定することが必要です。
資本金の額は、だれでも確認することができる「登記簿謄本」に記載されます。
弊社のお客様には、最低でも100万円以上の金額で設定することをおすすめしております。
ご参考までに平成24年度の資本金別の法人数を載せておきます。
資本金額 |
法人数(単位:社) |
割合 |
1円~100万円以下 |
205,454 |
8.6% |
100万円超~200万円以下 |
38,311 |
1.6% |
200万円超~500万円以下 |
1,182,604 |
49.8% |
500万円超~1,000万円以下 |
738,171 |
31.1% |
1,000万円超~1億円以下 |
196,060 |
8.3% |
1億円超 |
14,676 |
0.6% |
合計 |
2,375,276 |
100% |
文献:国税局統計資料
設立時の資本金の設定による節税のラインは1,000万円!
では、設立時の資本金はたくさんあった方が良いんじゃないか!
というお話しにもなりますが、そうともいいきれません。
資本金の設定金額を高くしすぎると、消費税法や法人税法による特典を受けることができなくなるからです。
具体的に見てみましょう。
【資本金「999万円」と「1,000万円」の差】
1.消費税納税義務の発生
資本金1,000万円のラインは、消費税を納める義務が発生するかどうかの違いになります。
設立時の資本金が1,000万円未満の場合は、原則として設立から2事業年度において、
消費税を納めなくてもいいという特例があります。
仮に売上3,000万円で、仕入1,000万円、人件費1,000万円、その他の経費が500万円で、
利益が500万円になった会社を見てみましょう。
|
金額 |
消費税額 |
売上 |
30,000,000円 |
2,400,000円 |
仕入 |
▲10,000,000円 |
▲800,000円 |
人件費 |
▲10,000,000円 |
▲0円 |
その他の経費 |
▲5,000,000円 |
▲400,000円 |
当期純利益 |
5,000,000円 |
1,200,000円 |
※人件費は消費税の対象外のため、消費税額は0円となっております。
ざっくりではありますが、おおよそ120万円もの税金を納めなくてはいけません。
2年間で240万円です。パートさんを雇えますね。
2.法人住民税の増加
資本金の額が1,000万円を超えた場合は、
法人住民税の金額が最低額の7万円ではなく、
18万円以上の納付が決算のたびに黒字・赤字関係なく必要となります。
さらに、決算時の資本金の額が1億円を超えた場合は29万円以上、
10億円を超えた場合は95万円以上となります。
※従業員数や事務所の所在地等により納付すべき金額は異なります。
わずか1万円の資本金の差が節税の明暗を分けるのです。
設立時の資本金は、可能な限り1,000万円未満に抑えるようにしましょう。
特定の事業では、一定の資本金額が必要!
もし、有料職業紹介等の特定の事業をすることを考えている会社があれば、
資本金の額を基準値以上に設定する必要があります。
例えば、有料職業紹介であれば、設立時より事業を行いたい場合は資本金の額を500万円以上に設定する必要があります。
同じく、建設業許可を受けるための要件としても、資本金の額が500万円以上必要になります。
認可の必要な事業目的を持つ会社は、必ず要件を確認するようにしましょう。
銀行口座をより開設しやすくする!
最近、法人口座の開設が厳しい!という話をよく耳にします。
これは、近年横行している振込詐欺などが影響し、
銀行側もホームページが整備されていたり、実績のあるしっかりとした会社でなければ口座開設を拒否するという傾向となっています。
資本金の額が1円だったら・・・
この会社は何がしたいんだろう、怪しいなという印象を与えかねません。
せっかく会社を作っても、口座開設できないようでは銀行取引が不可能になります。
的確な資本金の設定と事業計画で融資を受ける!
起業をする際に、資本金だけでは創業時に必要な資金を賄えない可能性があります。
この資金を外部調達する際に有効な手段として例に挙げるとするならば、
日本政策金融公庫さんの行っている「新創業融資制度」を利用することでしょう。
詳しい制度については、下記HPより確認して頂きたいのですが、
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html
「創業の要件」「雇用創出、経済活性化、勤務経験または修得技能の要件」「自己資金の要件」を満たした場合、
無担保・無保証人で運転資金や設備資金の融資を受けることができるといった内容です.
このうち、資本金の設定に直結する内容としては「自己資金の要件」箇所になります。
自己資金とは、創業者が事業に使用する資金を意味し、いわゆる資本金への出資金額と捉えることができます。
(ただし、家族や親戚から調達した資金は自己資金には含まれません。
融資の際は預金通帳の過去の推移等も確認されますので、自己資金の金額は正確に把握する必要があります。)
適切な自己資金を用意できれば、
資本金に含まれる自己資金の額の10倍の資金の融資を受けることも可能です。
【まとめ】
イケてる会社のつくりかた~資本金の設定編
■資本金は1円から設定できますが、可能であれば100万円以上にしましょう。
■資本金は1,000万円以上になると消費税の納税義務の免除の特例が受けられなくなりますので、
設立時は1,000万円未満に設定しましょう。
■資本金は、事業計画に基づき、融資も視野に入れた金額に設定しましょう。
次回は「5イケてる会社の株主構成」について書きたいと思います。
お楽しみにどうぞ。