2026.03.04

ACCOUNTING

従業員の残業が社会保険料を決める?4月~6月の残業抑制で年間80万円削減するコツ

「残業代をしっかり払っているのに、なぜか手元にキャッシュが残らない」

「社会保険料の負担が年々重くなり、経営を圧迫している」

そんな悩みを抱えている経営者様や経理担当者様は少なくありません。実は、1年間の社会保険料が「4月・5月・6月の給与(支給額)」だけで決まるという仕組みを正しく活用できている企業は、驚くほど少ないのが現状です。

もし、この3ヶ月間の残業を適切にコントロールするだけで、従業員10名規模の会社なら年間で約80万円ものコストを削減できるとしたらどうでしょうか。しかもそれは、従業員にとっても「手取り額が増える」という大きなメリットに繋がります。

本記事では、BtoB領域のバックオフィス支援に精通したプロの視点から、4月〜6月の残業抑制がもたらす劇的な節約効果と、実務で取り組むべき具体的なステップ、そして見落としがちなリスクまでを徹底解説します。会社の財務体質を強化し、従業員の満足度も高める「攻めのバックオフィス管理」を、今日から始めてみませんか。

従業員の社会保険料負担を抑えるための4月~6月の業務管理

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4月から6月の残業を戦略的にコントロールするための、具体的かつ組織的なマネジメント手法について解説します。

多くの経営者様や経理担当者様が、日々の業務に追われる中で見落としがちなのが「4月、5月、6月の給与額」が持つ重要性です。

この3ヶ月間に支払われた給与の平均によって、その年の9月から翌年8月までの1年間の社会保険料が決定されるため、この期間の残業代は「1ヶ月分」の影響に留まりません。1年という長いスパンで見れば、会社にとっても従業員にとっても非常に重いコスト負担に繋がることがあります。

業務の平準化による残業時間のコントロール

まず取り組むべきは、業務の平準化です。

特定のプロジェクトや納期のピークが、意図せずとも4月から6月に重なっていないかを確認してみてください。もし、前倒しが可能な作業や、7月以降に後ろ倒しできる定常業務があれば、積極的にスケジュールを調整することをお勧めいたします。

4月から6月の残業を減らすことは、単なる人件費の節約ではなく、社会保険料という「固定費」を1年間にわたって抑制するための経営戦略と言えるからです。

変形労働時間制の活用による対策の検討

1ヶ月単位や1年単位の「変形労働時間制」を導入している企業様であれば、より戦略的な対策が可能です。

例えば、4月から6月の法定労働時間を長めに設定し、他の期間を短く設定することで、同じ労働時間であっても「残業代」としての計上を抑えることができます。

これには就業規則の改定や労使協定の締結が必要になりますが、中長期的なコスト最適化を考える上では非常に有効な手段の一つと考えられます。

従業員への周知と協力体制の構築

残業を抑制する取り組みを成功させるには、従業員の協力が欠かせません。単に「残業をしないでください」と伝えるだけでは、現場の反発を招く恐れがあります。

そこで、「4月から6月の残業を抑えることで、皆さんの手取り額が年間で数万円から十数万円増える可能性がある」というメリットを丁寧に説明することが重要です。会社がコストを減らしたいだけでなく、従業員の生活を守るための取り組みであることを伝えることで、前向きな協力体制を築きやすくなるかと思います。

知っておきたい標準報酬月額の計算ルールと注意点

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実務担当者が算定基礎届を作成する際に陥りやすいミスや、法令遵守の上で注意すべきリスクについて説明します。

社会保険料の算出基準となる「標準報酬月額」の計算は、一見シンプルに見えて、実務上は非常に細かな判断を求められる場面が多く存在します。

特に毎年7月の「算定基礎届」の提出時期は、経理・労務担当者様にとって最も気の抜けない時期ではないでしょうか。正確な知識を持って対応しなければ、後々の是正勧告や、従業員とのトラブルを招くリスクがあるため、注意が必要です。

算定基礎届の作成時に間違いやすいポイント

算定基礎届で最も間違いやすいのが「支払基礎日数」のカウントです。月給制の場合は暦日数を数えますが、欠勤控除がある場合はその日数を引かなければなりません。

また、有給休暇を取得した日は支払基礎日数に含まれるため、これらを混同して計算してしまうと、誤った等級で登録されてしまう恐れがあります。

計算ミスによって社会保険料が不当に高く設定されることは、会社だけでなく従業員にとっても大きな損失となるため、ダブルチェックの体制を整えることが望ましいと言えます。

報酬に含まれるものと含まれないものの境界線

標準報酬月額の対象となる「報酬」の範囲についても、正しい理解が求められます。基本給や残業代、役職手当はもちろんですが、住宅手当や家族手当、さらには現物支給される通勤定期券代なども報酬に含まれます。一方で、結婚祝い金や出張旅費(実費精算分)などは含まれません。

この境界線が曖昧なまま処理をしてしまうと、本来支払う必要のない保険料が発生したり、逆に不足が生じて遡及支払いを求められたりする可能性があるため、注意が必要です。

意図的な賃金操作とみなされないための留意点

社会保険料を節約したいがために、4月から6月だけ極端に基本給を下げ、その分を他の月に上乗せするような露骨な賃金操作は厳禁です。

このような不自然な変動は、年金事務所の調査対象となりやすく、悪質と判断されれば重いペナルティを課される可能性もあります。あくまで業務の平準化や効率化といった「適正な労務管理」の結果として残業を抑制することが、健全な経営にとって必要不可欠な姿勢であると考えられます。

専門家への相談で得られる適正なコスト削減のアドバイス

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自社判断によるリスクを避け、社労士などの専門家からセカンドオピニオンを受ける重要性を提案します。

社会保険料の適正化は、単なる事務作業の範疇を超えた「財務戦略」の一部です。しかし、多くの企業様において、現状の顧問社労士から、一歩踏み込んだ提案を受けていないケースが見受けられます。

日々のルーチンワークだけでなく、御社のキャッシュフローを最大化するための視点を持ったパートナーが必要ではないでしょうか。

現状の顧問社労士から提案がない場合のチェックリスト

「今の顧問契約で十分か」を判断するために、いくつかのチェックポイントを設けてみてください。

  • 4月から6月の残業抑制について、具体的なシミュレーションを提示してくれたことがあるか。
  • 繁忙期の特例(年間平均による算定)について、自社が対象になるかアドバイスがあったか。
  • 社会保険料の削減が、従業員の手取り額にどう影響するか具体的な説明があったか。

もしこれらの点について満足な提案がないのであれば、バックオフィス体制の見直しを検討する時期かもしれません。

社会保険料適正化と福利厚生のバランス

コスト削減は重要ですが、それが原因で福利厚生の質が下がり、従業員の離職を招いては本末転倒です。専門家は、法的なリスクを回避するだけでなく、他社の成功事例を基に「会社も従業員も納得できる落とし所」を提案してくれます。

弊社セブンリッチアカウンティングでは、税務と労務のワンストップ支援を通じて、経営数字の改善と従業員満足度の向上を両立させるサポートを行っております。

Q&A:実務担当者が悩む社会保険料の疑問

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実務の現場で頻出する具体的な疑問に対して、専門的な視点から回答を提示します。

Q1.パートやアルバイトの残業も社会保険料に影響しますか?

A.はい、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しているパート・アルバイトの方であれば、正社員と同様に4月から6月の給与額に基づいて保険料が決定されます。特に時給制の方は、残業時間の増減が直接的に標準報酬月額の等級変動に繋がりやすいため、シフトの組み方一つで年間コストが大きく変わる場合がございます。

Q2.4月〜6月に欠勤があった場合の計算方法を教えてください

A.支払基礎日数が一定日数(一般的には17日、特定適用事業所の場合は11日)未満の月がある場合、その月の給与額は平均計算から除外されるルールがあります。もし3ヶ月とも日数が不足している場合は、現在の等級をそのまま引き継ぐなどの例外的な処理が必要となります。状況に応じて正確な判断が求められるため、算定の際は十分にご確認ください。

Q3.5月に入社した従業員の社会保険料はどう決まりますか?

A.5月に入社した従業員の場合、入社時に設定された「資格取得時決定」の標準報酬月額がそのまま適用されます。その年の定時決定(4月〜6月の平均による算出)の対象にはならず、新しい保険料が適用されるのは翌年の9月からとなります。中途採用時の給与設定が、その後の保険料負担に長く影響することを覚えておくと良いかと思います。

まとめ:経営基盤を強くするために社会保険料の仕組みを正しく理解する

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社会保険料は、一度決定されると1年間変更できない「固定費」としての側面を持っています。しかし、その決定プロセスである4月から6月の働き方を少し見直すだけで、年間で数十万円、従業員数によっては100万円単位のコスト改善が見込めるケースも珍しくありません。

この取り組みは、会社の利益を守るためだけのものではなく、従業員の手取り額を増やし、生活を支えるための「三方よし」の施策となり得ます。正しい知識を持ち、実務を適正化することが、結果として企業の経営基盤をより強固なものにしていくはずです。


もし、自社の社会保険料負担が適切なのか、まだ改善の余地があるのか判断に迷われる場合は、ぜひ一度セブンリッチアカウンティングへご相談ください。経営に集中できる環境を整えるために、一歩踏み出した対策を始めてみませんか。

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