個人事業主やフリーランスの方にとって、一年の総決算とも言える「確定申告」。期限が迫ってから慌てて書類を探し始めると、計算ミスや重要な控除の適用漏れにつながる恐れがあります。
特に個人事業主の場合、プライベートと事業の支出が混在しやすいため、「どの書類が必要で、どれを保存すべきか」を明確に理解し、整理しておくことが非常に重要です。
この記事では、個人事業主・フリーランスの方に向けて、確定申告に必要な書類をわかりやすく解説します。チェックリストとして活用し、抜け漏れのない準備を進めていきましょう。
確定申告の必要書類は申告区分と控除内容で決まる
確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を計算し、納税額を確定させる手続きです。この手続きを正しく行うためには、正確な数字を証明する「必要書類」が不可欠です。
必要書類は大きく分けて以下の3つのカテゴリーがあります。
- 全員共通で必要な基本書類(本人確認や口座情報など)
- 事業の利益を計算するための書類(青色か白色かで異なる決算書類)
- 税金を安くするための控除証明書(保険料や医療費の証明書など)
ご自身が「青色申告」か「白色申告」か、またどのような「所得控除」を受けるかによって準備物が変わります。まずはご自身の状況と照らし合わせながら、必要なものを確認してください。
個人事業主が確定申告で必ず手元に用意するもの
まずは、申告区分に関わらず、確定申告を行うすべての個人事業主が用意すべき基本情報と書類について解説します。これらは申告書作成のスタートラインとなるため、作業を始める前に手元に揃えておきましょう。
1.本人確認書類・マイナンバーカード
確定申告書にはマイナンバー(個人番号)の記載が義務付けられています。税務署へ提出する際には、以下のいずれかの方法で本人確認を行います。
・マイナンバーカードがある場合:カード1枚で「番号確認」と「身元確認」が可能です。e-Taxの場合はスマートフォン等で読み取ることで認証し、書面提出の場合は両面の写しを添付します。
・マイナンバーカードがない場合:「番号確認書類(通知カードやマイナンバー記載の住民票)」と「身元確認書類(運転免許証やパスポートなど)」の2点が必要です。
2.還付金受取用の口座情報
予定納税や源泉徴収ですでに納めた税金が、確定した税額よりも多かった場合、還付金として差額が戻ってきます。その振込先となる口座情報が必要です。申告書には金融機関名、支店名、口座番号を記入します。
注意点として、必ず「申告者本人名義」の口座を用意してください。屋号付きの口座でも本人名義であれば問題ありませんが、家族名義の口座や、名義が旧姓のままの口座では振込ができない可能性があるため注意が必要です。
3.e-Tax利用のための利用者識別番号
電子申告(e-Tax)を利用する場合は、税務署から発行される「利用者識別番号(16桁)」が必要です。
これらは事前に「電子申告・納税等開始届出書」を提出して取得するか、マイナンバーカード方式を利用してWeb上で取得します。年に一度しか使わない場合、ログインに必要なパスワードを忘れやすいため、管理には十分ご注意ください。
申告区分別|決算書・収支内訳書の作成に必要な書類
個人事業主の確定申告で最も重要なのが、事業の「儲け」を計算する書類です。これは事前に税務署へ届け出ている申告区分(青色か白色か)によって異なります。
青色申告の場合:青色申告決算書
「開業届」に加え「青色申告承認申請書」を提出している方は、確定申告書に加え「青色申告決算書」を作成・提出します。
青色申告決算書は全4ページで構成されており、損益計算書(売上や経費の内訳)だけでなく、貸借対照表(資産や負債の状況)の作成も求められます。特に最大65万円(または55万円)の特別控除を受けるためには、複式簿記に基づいた貸借対照表の作成が必須条件となります。手書きでの作成は非常に手間がかかるため、多くの事業者が会計ソフトを利用して対応しています。
白色申告の場合:収支内訳書
青色申告の承認を受けていない方は、自動的に白色申告となります。この場合、「収支内訳書」を作成・提出します。
収支内訳書は全2ページで、1年間の売上総額と、経費(消耗品費、旅費交通費など)の科目ごとの合計額を記載して所得を算出します。青色申告に比べて簡易的な形式ですが、売上や経費を証明するための帳簿づけ義務がある点は青色申告と同じです。
売上・経費の集計根拠となる書類の保存義務
決算書や収支内訳書を作成するために使用した「根拠資料」は、税務署への提出義務はありませんが、自宅や事務所での保存義務があります。税務調査が入った際に提示を求められるため、整理して保管しておく必要があります。
請求書・領収書・レシート等の証憑書類
売上を示す請求書(控え)や、経費を支払った際の領収書・レシートは、事業活動の証拠となる最重要書類です。
これらの書類は、原則として確定申告の期限日から7年間(白色申告の場合は5年間)の保存が必要です。月別や科目別にファイリングするか、封筒に分けて保管しましょう。感熱紙のレシートは経年劣化で文字が消えることがあるため、内側に折って保管するか、電子帳簿保存法に対応した形式で電子保存するなどの対策をおすすめします。
通帳のコピーやクレジットカードの明細
事業用の銀行通帳や、経費決済に使用したクレジットカードの利用明細も重要な証拠資料です。
特にプライベートの支出と事業の支出が混在している口座やカードを使用している場合、どれが事業経費かを明確にする必要があります。会計ソフトに取り込んだ場合でも、元の明細書は破棄せずに保管してください。
所得控除を受けるための各種控除証明書
個人事業主は会社員と異なり、年末調整がありません。そのため、社会保険料や生命保険料などの控除を受けるには、すべて自分で証明書を集めて申告する必要があります。
社会保険料の控除証明書
国民年金については、日本年金機構から送られてくる「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が必要です。
一方、国民健康保険には証明書の添付義務はありませんが、申告書には正確な支払金額を記入する必要があります。自治体から送付される「納付済額のお知らせ」(送付されない自治体もあります)を確認するか、通帳の引き落とし履歴から1年間の支払額を集計してください。
小規模企業共済やiDeCoの掛金払込証明書
個人事業主の退職金代わりや節税策として利用される「小規模企業共済」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の掛金は、全額が所得控除の対象となります。これらを申告するためには、秋頃に運営機関から郵送される「掛金払込証明書」の原本が必要です。節税効果が大きい項目ですので、紛失しないよう確実に管理してください。
医療費控除の明細書やふるさと納税の証明書
・医療費控除:1年間の医療費支払額(原則10万円以上)を集計した「医療費控除の明細書」を作成します。以前のように領収書を提出する必要はありませんが、5年間の保存義務があります。
・ふるさと納税:寄附先の自治体から届く「寄附金受領証明書」が必要です。e-Taxを利用する場合は、XMLデータの読み込みによる入力省略も可能になっています。
確定申告の必要書類に関するQ&A
Q1.領収書がない経費はどう処理すれば良いですか
電車やバスの運賃、慶弔費、自動販売機での購入など、領収書が発行されない経費については、「出金伝票」を作成して記録を残します。日付、支払先、金額、内容を具体的に記載しておけば、経費としての根拠資料として認められます。空の出金伝票は100円ショップや文具店で購入可能です。
Q2.カードの利用明細は領収書の代わりになりますか
原則として、クレジットカード会社が発行する利用明細書だけでは、法的な「領収書」の代わりにはならないと考えられています(内容の具体的な記載が不十分な場合があるため)。可能な限り、店舗から発行される利用明細(レシート・領収書)を受け取り、保存するようにしてください。Web明細のみの場合は、電子帳簿保存法のルールに則ってデータを保存するか、対応できない場合は印刷して保存します。
Q3.必要書類はいつまで保存する必要がありますか
青色申告の場合、帳簿や決算関係書類、領収書などの証憑書類は原則「7年間」の保存が必要です(一部書類は5年)。白色申告の場合は、帳簿や決算関係書類は7年、領収書などは5年の保存が必要です。あとでトラブルにならないよう、「確定申告の資料は一律7年保存」と決めて管理するのが安全策と考えられます。
まとめ:必要書類の早期準備が節税とスムーズな申告の鍵
確定申告は、期限ギリギリになると税務署も相談会場も混雑し、不明点があっても十分な確認ができなくなるリスクがあります。特に個人事業主の方は、書類の不備がそのまま税金の計算ミス(追徴課税や還付金の減少)に直結するため、慎重な準備が必要です。
まずは、今回ご紹介した「必要書類リスト」を参考に、手元の書類を確認してみてください。もし、「自分のケースではどの書類が必要か判断できない」「忙しくて準備が進まない」といった場合は、税理士などの専門家に相談するのも一つの有効な手段です。早めの準備を心がけ、余裕を持って確定申告を乗り切りましょう。