最近よく目にする確定申告という文字。この2月~3月は確定申告真っ只中の時期です。そんな中、確定申告に関する話が出たとき、もっとも耳にするであろう言葉が"青色申告"ではないでしょうか。実際のところ、青色申告ってなに?という相談も多くあります。今回は、20代起業家や起業などに興味を持っている大学生からの相談や質問を基に青色申告に関する事項を取り上げたいと思います。
青色申告がざっくり分かる4つのポイント
以下が今回の流れです。
- 青色申告ってなに?
- 青色申告と白色申告
- 誰が青色申告できるのか
- 青色申告の特典(メリット)・デメリット
1.青色申告ってなに?
青色申告とは、「事業を行う所在地の管轄の税務署に申請書を提出して承認を受け、原則として複式簿記により日々の取引を帳簿へ記録し、それに基づいて自らが納める所得税の額を申告する制度」です。
この青色申告制度は、記帳慣習を確立し申告納税制度の実を上げるための制度で、青色申告者には帳簿付けの義務がある代わりに、各種の特典が与えられます。その特典については後述します。
ここでポイントとなることが3つあります。
- 帳簿書類が備え付けてあること
- 取引の記録が正確に行われていること
- その帳簿書類が保存されていること
これら3つは制度の趣旨を達成するためのポイントです。簡単には、しっかり帳簿付けてね!というイメージで十分でしょう。
しかし、この正確な帳簿の管理が難しいということもあり、税理士事務所などに委託されるフリーランスの方々がほとんどであります。このことは委託することで支払う費用よりも享受できるメリットのほうが多いということがわかるのではないでしょうか。メリットについては後述いたします。
そもそも確定申告について知りたい方は下記をご参照下さい。
2.青色申告と白色申告
白色申告とは、青色申告を行っていない人が使用しなければならない申告制度です。
帳簿への記帳は単式簿記で行われます。
単式簿記は現金出納帳などを用いた記帳方法であり、非常に簡単な簿記です。簡単に言うと、お小遣い帳のイメージで良いでしょう。
白色申告で所得税の申告を行った場合、青色申告で受けられる特典が受けられないこととなってしまいます。
この特典を受けるために青色申告を行う目的が出てくるのです。
3.誰が青色申告できるのか
青色申告ができる人は、不動産所得、事業所得、山林所得が生ずる業務を行っているフリーランスで、納税地の所轄税務署長の承認を受けた者である。
ここで出てきた3つの所得に関して簡単に説明します。
不動産所得:マンションやアパート、賃貸、駐車場などの賃料による収入
事業所得:小売業、サービス業、農業、デザイナーなど事業による収入
山林所得:山林を伐採したり、立木のままで譲渡することによる収入
一般の方で多いのは、事業所得があり確定申告で青色申告を行いたいという方です。
4.青色申告の特典(メリット)・デメリット
青色申告の特典は様々ありますが、特に押さえておきたいことは以下の2点です。
① 課税所得からの特別控除(10万円、65万円)
② 赤字の繰り越し
①課税所得からの特別控除
先ほど述べた青色申告の要件を満たしている場合には、課税所得からの特別控除を受けることができます。
この特別控除がなぜ特典なのか!?
それは、課税所得からの特別控除を受けるということは、文字通り課税所得の金額を減らすことができます。そして、課税所得の金額が減れば、課税所得を基に計算される税金の額が減少します。
つまり、青色申告でオトクという発想です。
【具体例】
売上高900万円のフリーランス
経費400万円
所得500万円
青色申告特別控除65万円
課税所得435万円
所得税の計算
課税所得435万円×20%-控除額427,500円=442,500円
青色申告特別控除がない場合の所得税の計算
課税所得500万円×20%-控除額427,500円=572,500円
130,000円のオトクになります!!
さらに所得には住民税が10%かかるため、特別控除額65万円×10%=6万5千円も節税になります。
つまり、トータルで20万円近くの節税となるのです!!
さらにさらに、健康保険料を支払っている方の場合も、約8%分の約5万円も節税になります。(※自治体によって多少変動します)
全体で考えると25万円近くの節税となるといえます。
青色申告を行うために税理士に依頼し報酬を支払うにしても、十分なメリットがあるということがお分かり頂けるでしょうか。また、10万円の特別控除より、65万円の特別控除を受けられるように申告を行うほうがよりオトクになることもお分かり頂けることでしょう。
ここで、正確な帳簿にも種類があり、それによって控除金額が異なってきます。
原則:正規の簿記の原則に従った複式簿記による記帳 ➡最大65万円の特別控除
特例:損益計算書が作成できる程度の簡易帳簿に記帳 ➡最大10万円の特別控除
用いられる帳簿の正確度によって控除金額が変わるのです。
(山林所得は65万円の特別控除の対象とはなりません)
②赤字の繰り越し
青色申告者は、その年の赤字を確定申告で損失申告することによって、向こう3年以内に出る所得と相殺することができます。
この相殺が認められることによって、利益が事業年度でも支払う税額が少なくて済むようになる場合があります。
先日参加したとあるセミナーでは、フリーランスの方々で、「まだ利益が出ていないから青色申告とか税理士さんとかは考えていない」といった方々が多くいらっしゃいました。こういう方々が、利益が出たときに損をすることになってしまうのです。
その事例を見てみましょう。
【具体例】
前提
X1年度200万円の赤字 X2年度500万円の黒字のフリーランスの方の場合
税率:国税庁、超過累進税率
X2年度の所得税の計算
・X1年度から青色申告を行っていた場合→赤字の繰り越しが可能
利益500万円-前期赤字200万円=課税所得300万円
課税所得300万円×10%-97,500円=所得税202,500円
・X1年度から青色申告を行っていない場合→赤字の繰り越しはできません
課税所得500万円×20%-控除額427,500円=所得税572,500円
結論:青色申告を行えば所得税が370,000円オトクになります!
さらに住民税も200万円×10%=200,000円、健康保険も200万円×約8%=約160,000円オトクになるため、トータルで730,000円もオトクになります!!
繰り返しになりますが、青色申告を行っていれば赤字は繰り越せます。そして、将来支払う税金も減額される場合があります。
意外と見落としがちなのではないでしょうか。
デメリットとしては、
記帳業務が煩雑である・青色申告を行うために所属地域の税務署長に承認を得なければならないといったものが考えられます。どちらも事務的な手続きに関することと言えるでしょう。
確定申告(青色申告)を行う時のポイントは下記をご参照下さい。
まとめ
以上いかがでしたでしょうか。青色申告は正確な記帳という義務が発生する反面、さまざまな特典があります。白色申告でもフリーランスの方々は確定申告を乗り切ることは可能ですが、青色申告による特典は見逃せないのではないでしょうか。白色申告者の方は青色申告への転向を、これから事業を開始しようとする方々も今年は3月17日までなので事業開始時から青色申告を行うことをご検討してみてはいかがでしょうか。
弊社ではサラリーマン、エンジニア、ライター、モデル、スポーツ選手等のフリーランス、個人事業主をはじめ、学生の方におかれましても確定申告についてもアドバイスをしておりますので、気軽にご相談ください。