2014.11.11

役員報酬で節税?~使用人兼務役員という選択~

 今回は従業員を役員へ登用する際、会社・従業員双方にメリットがある使用人兼務役員という制度をご紹介します。

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そもそも使用人兼務役員って??

使用人兼務役員とは、たとえば取締役営業部長や取締役管理部長といった、使用人としての肩書を有する取締役のことです。
法人税法では、下記の3要件を満たすこととされています。  
 1.役員(社長、理事長その他政令で定めるものを除く)であること
 2.使用人としての職制上の地位を有していること
 3.常時使用人としての職務に従事していること

この要件を満たす場合、たとえば取締役として登記しても(ただし、委員会設置会社の取締役は除く)使用人兼務役員になれます。
逆に、会社の代表者は1のとおり使用人兼務役員になれませんし、非常勤役員も3に該当しないのでやはりなれません。

なんで使用人と兼務させる必要があるの?

それではなぜ、わざわざ役員に使用人の地位も与えておくのでしょうか?
これにはいくつかメリットがあるのでご紹介します。

1.役員なのに労働保険に加入できる
 役員は原則として労働保険(雇用保険+労災保険)に加入することができません(例外的に加入できるケースもあります)が、従業員は加入できます。そのため、使用人兼務役員は、「従業員部分」について加入できることになります。
2.給与額の変動が可能
 
原則として、役員報酬は毎月定額です。なぜなら、定額にしておかないと変動分が税務上、損金(≒税務上の費用)にならないからです。しかし、使用人兼務役員の「従業員部分」の給与については毎月変動させても損金にすることが可能です。
3.賞与の支給も可能になる
 2のとおり、役員報酬は毎月定額である必要があります。賞与も実態は臨時の給与ですから、役員に対する賞与は原則として全額が損金となりません。しかし、使用人兼務役員の「従業員部分」の賞与は、損金にすることができます。

 役員は労働保険に加入できませんので、業務中の事故でけがをした場合、実費で治療しなければなりません。(業務中のけがについて健康保険は使えません!)しかし、労働保険に加入していれば、労災保険の適用を受けられますので、福利厚生が充実します。 
 また、会社側にとっても役員に対する賞与の一部を損金に出来るので、節税につながります。

使用人兼務役員になるには?

いくつか条件はありますが、一般的な要件は次のとおりです。
 1.代表取締役・専務取締役等、会社を代表する役員ではない。 
 2.同族会社の特定の役員(みなし役員)に該当しない。
 3.ハローワークに「兼務役員雇用実態証明書」を提出して保存しておく。
  
※こちらにフォーマットがあります(東京ハローワークHP)
   http://tokyo-hellowork.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0110/2535/koyo022.pdf
 4.同じ部長職等の人と勤務実態や権限に差を設けない。
 5.従業員分の給与を、労働保険の対象にする。

留意点

 使用人兼務役員の給与は、「使用人部分」と「役員報酬部分」に明確に区分し、「使用人部分」は、使用人の給与規定に従って支給することが必要です。また、使用人兼務役員分の賞与は、他の従業員と同じタイミングで支払わないと損金として認められません。これは未払経理をした場合でも同様で、事業年度終了の日の翌日から1ヵ月以内に他の従業員と同じタイミングで支払う必要があります。
 そのほかにも使用人兼務役員は、役員としての任期を終えても従業員としての地位は残ります。そのため、たとえばその使用人兼務役員と揉めて解雇したい場合でも、従業員解雇の手続きに従うことになります。

まとめ

・役員でも労働保険に加入することが可能、また賞与を損金にできる。
・ただし適用要件があったり、役所での手続きが必要
・兼務役員にした後も、常に税法以外の法律にも気を使う必要がある。

いかがでしたでしょうか?
使用人兼務役員は導入するとメリットはあります。ただ、注意すべき点も多くあります。
ですので興味を持たれた方は、一度顧問の税理士先生などに相談されることをオススメ致します。
弊社では、この検討は勿論、役所への手続きの代行も行っております。

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