亡くなった方(被相続人)が所有していた財産を相続した人(相続人)に相続税はかかってきます。
相続財産の金額が増えれば増えるほど相続税も高くなっていくため、被相続人の財産を減らすことができれば相続税も減ります。
◆違う人名義の口座とか作れば税金減らせる!?
他人の名義となっている通帳等はその名義人の相続財産となって相続財産を減らせる!
なんて安易な考えをお持ちの方。それは間違いです!
「名義預金」をご存知でしょうか?例えばこんなものが該当します。
① 専業主婦の方が財布をやりくりしてコツコツためたへそくり
② 父が子供のために子供名義の通帳にコツコツためたお金
これらはすべて「名義預金」として夫の相続財産となります。
なんで!?と思われるかもしれませんが、税法上は次のように考えます。
① へそくりは実質的には夫のものとみなします。その専業主婦の方がお金を貯められたのは夫の稼ぎのおかげ。
② 子供名義の通帳は実質的に両親のものとみなします。その子供がお金を貯められたのは父のおかげ。
納得できないと思われますが、現実は基本的に相続財産とみなされてしまいます。
※名義預金の他、名義株式についても同様の取り扱いがあります。
◆どうせ名義預金なんて見つからない!大丈夫!?
甘~い!税務署はすべての金融機関に照会を行えるので、預金の動きは簡単に把握できます。筒抜けです。
もし税務調査によって税務署が来た場合には家族すべての預金は調べられていると考えてください。
◆相続財産とみなされないためにはどうしたら良いの?
財産の所有権が受け取る方に移っていることを証明できれば良いのです。具体的には次の方法があります。
① 贈与した事実を残しておく
相手に贈与したことをしっかり証明できるような形を残すため、「贈与契約書」を作成し、その契約に従った贈与を行います。
② 贈与税の申告を行う
年間110万円以上贈与すると贈与税がかかってしまい、
その場合は贈与を受けた人が受けた年の翌年2月1日~3月15日までに贈与税の申告書を税務署に提出する必要があります。
とはいえ、申告書には誰に、何を、いくら贈与したのか、を記載すればよいのでそれほど難しい手続きではありません
(株式や土地など評価するのが難しいものがあると格段に難易度は上がります・・)。
③ 贈与者は贈与した財産に一切関与しない
印鑑は当然別々に、通帳やキャッシュカードも名義人が所有して管理し、
名義人自身がいつでも使える状態にして、実際に使用してください。
方法のうち①~②は贈与者だけで簡単に形式を整えることができちゃいます。
しかし、贈与は贈与者が贈与するという意思表示に、受贈者が同意して契約書を作成し、それに従って実行して、初めて成立します。贈与が成立しないと、将来の相続財産になります。
贈与者が贈与したお金を自由に使っていたり、そのまま口座に寝かせておいたら、贈与という行為自体が疑われます。
贈与した現預金が実際にどのように使われているか、が重要となってきます。
上記①~③のいずれかが整っていない場合は名義預金として課税されるリスクがありますのでご注意ください。
◆どうしても子にお金を残したい!・・けど名義預金にはしたくない!
小さい頃から多額のお金を持たせたくない、という方もいるでしょう。人はそこにお金があれば無駄遣いします。教育上もよろしくありません。
そんな時に有効な手段が保険です。子に養老保険や個人年金保険に加入させて、時期が来るまでお金を使えない状態にすることも可能です。
契約者・被保険者を親に、保険金受取人を子にして親が保険料を負担しても良いですし、子の口座にお金を贈与してその口座から生命保険料を自動引き落としにする方法でも行うことができます。
(この場合の契約者や被保険者をどのようにするのがベストかは将来も見越した上でよく検討する必要があります)
◆確定申告後に名義預金がみつかってしまった・・・!
問題になるのは相続税申告後の税務調査で、名義預金が漏れていることを税務署から指摘されたケースです。
その場合、本来その名義預金分として払うべき相続税はもちろん、追加納付した税金に対して次のペナルティもつきます。
① 延滞税 ・・・・年14.6%(2か月以内は約7.3%)
② 過少申告加算税 ・・・・自主的に申告書を修正した場合は0%
税務署から指摘された場合は10%~15%
③ 重加算税 ・・・・財産を隠蔽したり悪質な場合35%~40%
延滞税は必ずかかりますが、②と③は悪質かどうかによってどちらかかかります。
◆まとめ
夫婦関係や親子関係で贈与契約書なんて普通作らないでしょ?と疑問を持たれたかと思います。
それでも、税務署にはっきりと、贈与です!と言える証拠は自ら用意しておかなければ、その事実は立証することはできません。
しっかりと準備して贈与の証拠を残しておけば名義預金とされませんので、いつ税務署が来ても良いように今一度見直しましょう。
また、贈与契約書はパソコン等でいつでも簡単に作成することができます。
やばい!税務署きた、契約書作っておこう!と直前に対策することもできます。
が、そういったときに日付や住所などでつじつまが合わない部分が出てきたりと、ボロが出るものです。
その場合は悪質なものとして、重加算税の対象となる可能性もあります。
証拠はその都度しっかりと用意しましょう!
さらに万全を期すならば、公証役場へ行き、確定日付をもらってくれば、いつ作成したのか明白にすることも有効です。