2016.07.12

ACCOUNTING

パートの方必見!社会保険の加入基準が増える!?~新たな106万の壁~

こちらのブログで現状の制度、今後の展望についてご説明しました。
今回は新たに設定される106万円の壁について説明します。
パートをしている方は必見です!!!!

ブログ2.jpg

現状の加入基準

現状の短時間労働者の社会保険加入の条件は以下の3つです。

・会社が社会保険に加入している事業所(適用事業所)であること。
・正社員など正規職員の4分の3以上の労働時間と労働日数があること
・臨時、日雇い、季節的業務で働く人ではないこと

「130万円の条件がどこにもないじゃないか」と思った方がいると思います。実は、130万円の壁と社会保険の加入基準はそもそも対象者の前提が違います。
130万円の壁は「扶養」の範囲の基準です。対して社会保険の加入基準は短時間労働者すべてに対しての基準なので、扶養を受ける対象外の人も対象になります。
下の図のようなイメージです。

ブログ.png

この基準を意識している方は少ないかもしれません。正規職員の4分の3以上の労働時間と労働日数の労働をする短時間労働者が少ないからかもしれません。
詳しくは以前あげたブログをご確認ください。

次に、新たな基準がどう加わるのか見ていきます。

新しい加入基準

平成28年10月より加入基準が増えます。具体的には、新たに次の基準すべてに当てはまると加入しなければいけなくなります。特に従業員501人以上の大きな会社にお勤めの方が対象となってきます。

・週20時間以上の労働(1日の所定労働時間が8時間、週休2日の場合)
・月額賃金8.8万円以上(年収約106万円以上)
・勤務期間1年以上
・従業員501人以上の事業所(適用拡大前の基準で適用対象となる労働者の数で算定)
・学生以外

このように加入基準が増加します。
いくつかの条件がありますが、すべての条件に合致する人は年収が106万円を超えると社会保険に加入しなければならなく、社会保険料支払いのために手取り額が減少してしまうことがあります。
これが106万の壁です。

実際の事例

社会保険の加入対象になった場合、どのような影響があるのでしょうか。
結婚して配偶者がいるパートタイマーの人などは、配偶者が自営業か会社員かで毎月の手取に差がでます。

① 配偶者が自営業の場合(本人の月収は約10万円)

月額標準報酬は98,000円、社会保険料(厚生年金保険料+健康保険料)は14,000円とします。
配偶者が自営業の場合、もともと国民健康保険と国民年金に加入し、社会保険料を負担しています。国民年金は月額約15,000円でこれに加えて国民健康保険料を払っているので、社会保険料よりも高いことになります。これが制度拡大によって健康保険、厚生年金保険に切り替わることで社会保険料は減少します。つまり、手取りは増えることになります。

② 配偶者が会社員の場合(本人の月収は約10万円)

配偶者が会社員の場合は配偶者の扶養で社会保険に入っているため、これまでは社会保険料の負担はありませんでした。しかし、制度拡大によって社会保険料を支払う必要が出てくるため、毎月の手取額は社会保険料分だけ減少することになります。月収約10万円の方だと年間で健康保険料で約58,000円、厚生年金保険料で約105,000円の支払いをしなければならなく、合計約16万円手取りが減少します。

 

現状

適用後

自営業

毎月15,000(国民年金)+国民健康保険

毎月約14,000円

会社員

なし

毎月約14,000円

扶養に入っているか否かで真逆の変化が起こることがわかります。

③ アルバイトやパートを掛け持ちしていた場合

パート先Aから60万円、パート先Bから60万円の給与を得ていたとします。
合計120万円になりますが、この場合は社会保険には加入しません。106万円の壁は勤務先の社会保険に加入しなければならないかの基準なので、それぞれが106万円を超えなければ社会保険に加入することはないのです。
ただし、130万円の壁はあるので、収入総額が130万円を超えた場合は、今まで通り扶養から外れて社会保険を払う必要があるので注意してください。

社会保険加入の対象から外れるために行われるであろう対応

① 年収を106万円以下にする
一番シンプルな方法です。106万円以下にすれば社会保険に加入することはありません。

② 週20時間以上働かない
時給が高い方は労働時間を減らすことで対応できるかもしれません。

③ 従業員が500名以下の会社へ移る
従業員が少ない会社でアルバイトやパートをすれば106万円の壁が適用されることはありません。上記2つの方法では結局手取額が現状より下がってしまうということもあるので、思い切って転職して手取り収入を維持するという方法があります。
いずれの方法をとるにしても現状のままというわけにはいかなそうです。

そもそも社会保険って払わないほうがいいもの?

 社会保険には厚生年金保険と国民健康保険の2つが含まれているということはもうお分かりいただけたと思います。このうち国民健康保険は配偶者に扶養されていても同じ待遇を受けることができますので、支払いだけが増える形になってしまいます。
 一方、厚生年金保険は扶養されている状態ではなかったものです。扶養されている状態でもらえる年金は国民年金分のみです。しかし、厚生年金を払えば、国民年金分に厚生年金分が上乗せされて将来より多くの年金を受け取ることができるようになります。80歳よりも長生きすれば厚生年金の負担額と年金の受取額はほぼ同額になります。
社会保険は一概に払わないほうがいいものとは言えず、払った方がお得な場合もあります。

終わりに

 新しく加入条件が拡大された結果、社会保険の加入条件は年収で見ると130万円と106万円の2つの基準ができることになりました。「今の手取額を下げたくない!」という方はここまでに書いたことに気を付けて、自分が条件に当てはまっているのかどうか、今後当てはまりそうなのかどうかや、社会保険に加入しないためにはどうしたらよいのかを注意深くチェックしましょう!


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