突然ですが、今月26日に札幌競馬場がグランドオープン予定となっております。
午年の今年こそ競馬デビューをしてみようかと企んでいる今日この頃な札幌在住者です。
初めまして。
さてみなさんは、人呼んで、「外れ馬券裁判」をご存知でしょうか。
「外れ馬券は経費」2審も認定 競馬で1億4千万円利益の男性 大阪高裁判決
2007~2009年の3年間の間に獲得した馬券の払戻金約30億1千万円が無申告であったため所得税法違反の罪で起訴された男性が、一時所得として当たり馬券の購入費用約1億1千万のみを控除して申告するよう求められていたのに対し、雑所得として外れ馬券の購入費用をも含めた馬券購入費用約28億7千万円を控除して申告することを認められた、というものです。大阪高等裁判所はこの判決に最高裁に上告しており、今月2日、いよいよ最高裁は検察側の上告を受理することを決定しました。
おそらくこのブログをお読みの99%の方には無縁の話でしょうが、注目していただきたいのは、馬券の払戻金と一口に言ってもその中身によって従来通りの取り扱いをすることが不適正になる場合もあるということです。特に前例のないことを始められようとする方は、後々こういう壁にぶち当たることもあるかもしれません。
では、この裁判の争点を所得の種類、必要経費について説明しながら、振り返ってみたいと思います。
◆一時所得と雑所得
まず、馬券の払戻金についてですが、通常であれば一時所得に該当します 。
一時所得と雑所得の違いを非常にざっくり説明すると、
・一時所得・・・臨時的、偶発的に入ってきた所得
(例)懸賞、クイズの賞金品・生命保険の満期保険金
・雑所得・・・収入は入ってきているけど他のどの所得にも該当しないもの
(例)公的年金・個人年金・原稿料、講演料(本業以外の方の場合)
今回のケースでは、これだけ長期間利益を得ることを目的に行われているのであれば、払戻金は雑所得に該当すると判断されました。
一時所得と雑所得の計算方法ですが、それぞれ以下のようになります。
・一時所得
{(収入金額-その収入を得るために支出した金額)-特別控除額50万円}×1/2
・雑所得(公的年金以外)
総収入金額-必要経費
一時所得に該当するとして、馬券の払戻金を計算する場合、収入を得るために支出した金額は、当たり馬券の購入費用のみとなります。当初は3年間に獲得した配当金約30億1千万円から、当たり馬券の購入費用約1億1千万円を差し引いた約29億円について一時所得と認定され、税額は約5億7千万円でした。
ところが、外れ馬券の購入がなければ払戻金を得ることもできなかったとして、馬券購入費用28億7千万円の全額が収入を得るために直接要した費用であると認められたことにより、税額は約5200万円まで減少したのです。
◆全ての競馬愛好家に当てはまるわけではありません!
一つお断りしておくと、これはあくまで特例で、他の方でも毎日馬券を購入しているからといって同じ主張が当てはまるわけではありません。現に、雑所得として外れ馬券の購入費用も控除して申告した結果認められず、追徴課税を受けている方もいらっしゃいました。
大阪地裁の判断と真逆!?外れ馬券を経費と認めず 札幌国税局が利益上回る追徴課税
無申告の多い馬券の払戻金ですが、インターネットに取引履歴が残りますし、昔は払い戻し窓口付近に覆面税務署員がいたとかいなかったとか・・・。とにかく申告はきちんとしましょう。
◆もし不服があった場合
先月発表された国税庁の資料によると、平成25年度の税務訴訟における納税者側の勝訴率は7.3%です。
平成25年度における訴訟の概要
まだ1割もない状況ですが、もし今回のように税務署の処分に不服があった場合、どうすればいいのでしょうか。その場合、国税不服審判所というところに異議申立をすることができます。国税不服審判所とは、「国税に関する法律に基づく処分にかかる審査請求について裁決を行い、納税者の正当な権利利益を救済する機関」です。
手続きの流れとしては、下のようになります。
国税の不服申立制度の概要図
手続きは煩雑ですが、もし本当に納得のいかない処分を受けた場合には、こんな手段もあります。